まちの日常に根差すことを願うOGAWA COFFEE LABORATORY

京都に本店を構え、70年の歴史をもつ小川珈琲。その小川珈琲が展開するOGAWA COFFEE LABORATORYが2020年に桜新町の住宅街に誕生しました。店長の松政伸哉さん、広報担当の公文翼さん、バリスタの衛藤匠吾さんにお話を伺いました。

——小川珈琲という会社について教えてください。

広報担当 公文さん(以下、公文):小川珈琲は1952(昭和27)年に京都で創業し、2022年の今年創業70周年となります。先代の初代社長が戦地のラバウルでコーヒーに出会ったんです。そこで、本物のコーヒーの美味しさを日本でも広めたいと卸売業からスタートしました。現在はコーヒー豆の製造販売、喫茶店やカフェへの卸し売り、家庭用商品の小売り展開もしています。直営店は11店舗、うち東京都内に2店舗あります。

店長 松政さん(以下、松政):現在桜新町の店舗では40人弱が働いています。営業時間が長いので、スポットで入る学生さんや主婦の方など様々な方がいらっしゃいます。都内にもう一店舗ある下北沢のスタッフは8人で、下北沢も同じ業態なので、スタッフも行き来することがありますし、二つの店舗を合わせて一つのラボラトリーとして考えています。


常時22種類以上のコーヒー豆を取り扱っていて、添えられたカードには豆の産地や風味の情報などが書かれている。

——なぜ桜新町にお店をオープンしたのでしょうか。

公文:私たちには「コーヒーを日常にとってかけがえのないものにしたい」という願いがあります。それを実現するにあたっては、人々の生活という日常に溶け込み、根差していくことが大切だと考えていました。銀座や表参道といった場所は、人は集まるけれど、住んでいる人が多いわけではありません。桜新町が関東で最初の宅地分譲が行われた街 として由緒があったり、みなさんの暮らしがある地に私たちも仲間に入れてもらうことで、日常に小川珈琲があって、日常に寄り添いながら、未来に残せるものになりたいという想いでこのまちを選びました。


お話を伺った店長の松政伸哉さん(左)、バリスタの衛藤匠吾さん(中央)、広報担当の公文翼さん(右)

——2020年に、新業態「OGAWA COFFEE LABORATORY」という形で桜新町に店舗をオープンしました。この店舗のコンセプトはどういったものでしょうか?

 公文:コンセプトは「珈琲の味わいの先にある体験価値とコミュニティを創造していくオープンイノベーションの場」です。 当店を立ち上げた弊社常務取締役の宇田が言っているのですが、ただ単に物を売って価値を伝えることには限界がある。そこに、おもてなしの精神や空間をプラスして、体験価値を一緒に届けながら発信していくことで、珈琲文化を未来に残したいと考えています。


コーヒー豆を保管する蔵を中心としたワークスペースは一段低くなっていて、バリスタの様子が見渡せる


店内ではキッチンの様子も垣間見ることができる

公文:お料理をする場所、コーヒーをたくさん保管する場所、焙煎する場所、技術を磨いていく場所、やりたいことを凝縮して体験や新たな価値を届けるには、それらのスペースが必要でした。シェアードロースティング と言って焙煎機を一般の方も使っていただける取り組み(¥5,000/時間 )やバリスタステーションと呼んでいるトレーニングができるスペースもあって、こちらもゆくゆくは一般のお客様も使える場所にしていきたいと考えています。
また、炭焼きをコンセプトにしたお料理をシェルシュの丸山智博さんに監修いただいたり、建築は関祐介 さん、クリエイティブディレクターにはalphaの南貴之さんを迎えるなど、いろんな人の知見や価値観を掛け合わせた空間にして、我々の技術も一緒に発信しながら膨らませていこうというコンセプトです。


一般のお客様でも店内の焙煎機を使うことができる「シェアードロースティング」サービス (提供:小川珈琲株式会社/撮影:伊藤 徹也)

—ここで働くことになった経緯やお仕事内容を教えてください。

松政:大学を卒業する頃に京都の小川珈琲の本店でアルバイトをしていました。バリスタになりたかったんです。抽出の楽しさだったり、コーヒーをとりまく喫茶店などの文化だったり、コーヒーの魅力に取り憑かれて、就職したいと思いました。京都でコーヒー=小川珈琲だったんです。ここの店長になる前は、京都の本店で店長をしていました。本店でアルバイトをして、社員になっていろんな店舗を経験し、店長として本店に帰った形になります。そして、2020年8月のここ桜新町にオープンする月に、家族とともに引っ越してきました。桜新町と下北沢の店長を兼任し、合計50人くらいの業務管理やマネジメント業務全般を行っています。


松政さんは下北沢の店舗の店長も兼務している

公文:新卒で小川珈琲に入社しまして、現在4年目になります。1年目は京都本社の人事で採用担当をしていたのですが、元々東京で働きたい、何かを発信したいという気持ちがあり、たまたま会社の意向と重なって、人事の仕事のあとに東京で営業をしていた期間がありました。その後、松政とほぼ同じタイミングでこの店舗でのPRに関わるようになりました 。SNS運用なども担当しています。


コーヒーが好き、コーヒーのある空間が好きだという公文さん

バリスタ 衛藤さん(以下、衛藤):関西生まれ関西育ちで、20歳のときに京都の本店にアルバイトで入りました。社員希望で働いていて、6年ほど経って、正社員になってそろそろ異動があるかなと思った矢先にこのラボラトリーの話があり、リードバリスタとして店舗を任せられました。毎日200-300人くらいの方に来ていただける店舗なので、一日に平均300杯ほどはチームでコーヒーを淹れている計算になります。バリスタになりたいホールスタッフは、仕事が終わったらトレーニングするといったことが日常的にあって、やっていることはスポーツや部活のイメージに近いですね。

ラテアートの大会で優勝経験をもつバリスタの衛藤さん

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